
■心の中身は、目には見えません。
あなたは毎日、鏡を見ていますか?
女性はもちろん見ているでしょう。男性だって、朝、顔を洗う時、洗面台の鏡に向かうはずです。
では、鏡に映った自分の顔を見て、あなたはまず、どんな事を思いますか? おそらく「体調」ではないでしょうか。
顔には、その時々の体調が表れます。身体の調子がよければ、血色がよくて明るい笑顔が映るでしょう。でも、どこかが思わしくなければ、顔色は悪く、表情も暗くなります。吹き出物のように、明らかな異常が肌に認められる場合もあるかもしれません。
私たちは自分の顔を鏡で見ることで、セルフチェックをしているわけです。
体内のバランスが崩れた場合、たいてい、その影響が皮膚の表面に表れます。だから、具体的な対策はとりやすくなります。「目の周りに隈ができている→最近、睡眠不足だから→今夜は早めに床に就こう」「吹き出物ができている→甘い物ばかり食べているから→お菓子を控えよう」といった具合です。
でも、不調の原因が心の中にある場合はどうでしょう。原因の特定が難しいだけに、具体的な対策はとりにくくなります。体調不良や不快感の原因がわからないまま、イライラはつのるばかり。表情はますます険しくなり、体調もさらに不安定になる……という悪循環に陥ってしまいます。それが高じると、神経症になったり、周囲への迷惑行動をとるようになったりする場合もあります。
そこまで深刻な状態に至らなくても、漠然とした「生きづらさ」を感じている人は少なくありません。例えば「周りに気兼ねして、自分が思った通りに行動できない」「人づきあいの大切さはわかっているけれど、どうも苦手」「組織を率いる役職を任されているが、リーダーシップをとれないので毎日が苦痛」等々……。あなたはどうでしょうか?
■画には、心の内側が映っています。
もし、心を鏡に映すことができれば、自分で原因を認識し、具体的な対策や行動を起こして解決することができるでしょう。でも、残念ながら、心の内側を直接映し出す方法はありません。
でも、その代わり、間接的に心の状態を投影する方法があります。「画」を描くことです。
左は、以前開催したセミナーで、ある受講生(30代男性)が描いた画を再現したものです。テーマは「人とのおつき合い」。一見、問題あるようには思えないかもしれません。でも「人とのおつき合い」というテーマなのに、どちらの顔も描かれていないのは何故でしょう?(>分析・解釈とアドバイスはこちらをクリック)
絵画には、描いた人の“心の状態”が反映されます。絵画を描くとは、喜びや悲しみ、怒り、恐れ、不安、情熱、願いといった、目には見えない“内なるメッセージ”を、他人に伝えるために、他人にわかるような形で表現する行動、と言うこともできます(美術に限らず、あらゆる芸術活動が作者の内面的表現活動であることを考えれば、これは当然です)。
そこで、逆に外側から“鍵”となるテーマを提示し、それに基づいて画を描いてもらいます。そして、描かれた画を基に、その人の心がどんな状態にあるか、どんなところに問題があるかなどを、分析、解釈します。これがアートセラピーの原理です。
■自分の心を知った「その後」が重要です。
心の状態がわかり、問題が明確化したら、解決するためにはどうすればいいかを考え、実践します。この「自分で考える」という点が重要です。もちろん、セラピストもアドバイスをしますが、最終的に行動するのは自分自身です。
「自分で考えること」が重要ですから、そのためには、自分を客観的に見たり、あるがままを受け入れることが必要になります。その過程で、他人とのコミュニケーションも求められます。
心に厚い壁をつくっている人は、外側から自分を見る経験に乏しかったり、他人から意見を言われることを拒絶する傾向にある人が少なくありません。しかし、そこに画という“鏡”を置くと、心の壁を楽々越えることができます。心の状態が、目の前の画に映し出されているのですから、自分を素直に客観視できますし、他人のアドバイスも素直に受け入れることができます。
このように、アートセラピーは、ただ画を描いて“心の状態”を把握して終わり、というものではありません。認識した上で、次にどうつなげていくか……むしろ、そちらのほうが大切になるのです。
- 「アートセラピー」という名称は、広い意味では、音楽や演劇などによるセラピーも含みます。ただし当スクールでは、絵画によるセラピーに限定して呼称しています。
- 「画」と「絵」の違いについて >こちらをクリック
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